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2013年1月16日 (水)

16.電流帰還バイアス回路

固定バイアス回路を検討しましたので,
やはり,電流帰還バイアスも説明してみます.
負帰還の話になりますので,多分,大学生にならないと勉強しないとは思いますが,
まあ,知っていて損はありません.
固定バイアス回路を設計するときには,コレクタに流したい電流の1/hFE倍の電流を
ベースに流すようにRBを計算しました.(図1参照)
最近のテスタは安物でもhFEが測定できたりするものも多いので,
hFEを測定してから抵抗を計算することも可能です.
ですが,何かの拍子にトランジスタを壊してしまうこともあります.
例えば,ハンダ付けに失敗するとか,足を切り落としてしまうとか....
となるとトランジスタを取り換える必要があるのですが.
 
ここでは,トランジスタのhFEは100で一定の値を使ってきましたが,
実際のトランジスタは同じ型番だからといって,hFEは一定ではありません.
(実際には,温度,コレクタ電流,コレクタ電圧,周波数に依存します.)
例えば,よく使う2SC1815というトランジスタはカタログ値が
IC=2mA, VCE=6Vで hFEは 70から700 となっています.
ということは,トランジスタを取り換える際にはhFEから測定し直して,
RBも最適なものに取り換える必要があるということになります.
でないと,動作点が変わってしまいますからね.
(動作点については,10.バイアス 15.バイアスと動作点 に多少記述があります)
つまり,
固定バイアス回路は動作点が多少変化しても気にならないところに使われる回路ですね.
 
となると,トランジスタのhFEが変わっても,動作点が変わらない回路が必要になりますが,
これが図2の回路になります.電流帰還バイアス回路です.
抵抗が2つ追加されているだけですが,この抵抗が結構いい働きをします.
この回路の基本的なコンセプトを説明します.
 
1.(IAに比べて)IBは非常に小さく,VB(抵抗RAにかかる電圧)は
  RAとRBの比のみで決まる.
2.コレクタ電流ICとエミッタ電流IEは等しい.
  (ベース電流IBは非常に小さい,もしくはhFEが非常に大きい)
3.VBEは十分に小さいとして,VE(REにかかる電圧)とVBは等しい.
 
このように考えると,コレクタ電流は電源電圧とRA,RB,REだけで決まる,一種の定電流源になります.
 
IC=RA/{RE(RA+RB)}×VCC
 
電流の式からわかるように,トランジスタに流れる電流であるにもかかわらず,
hFEに依存しませんので,hFEが変化してもトランジスタを取り換えても,
コレクタ電流は一定の値になります.
 
以上のように,理想化して考えるとコレクタ電流が定電流になりますので,
動作点が変化しないことがわかります.
が,’電流帰還’の意味がちょっとわかりにくくなりますので.
もう少し一般化して考えてみます.
3.の条件を外してみます.
すると
 
IC = VE / RE
VE = VB - VBE
VB = RA/(RA+RB)×VCC
 
となります.VBEが関係してきます.
さて,ここで,なんらかの影響でICが増えたと仮定します.
すると
REは一定値なので,VEが増加することになります.
抵抗REに流れる電流が増えたので,VE=IC×REからです.大丈夫ですね?
VBは抵抗と電源電圧だけで決まる値ですので,VBに変化はありません.
ということは,VBE (= VB - VE)が小さくなるということです.
ここで,VBEが小さくなるとどういう現象が起こるでしょうか.
’7.電圧増幅2’や’9.ダイオード’で簡単に説明していますが,
トランジスタのベース(E)ーエミッタ(E)の間はダイオードと全く同じです.
ということは,ベースーエミッタ間に電圧をかけて,ベースに流れる電流を測定すると
図3(9.ダイオードの図4と同じです)のようになるはずです.
つまり,VBEが減るとベース電流IBが減ります.
当然,IC = hFE×IB なので,コレクタ電流も減ることになります.
いかがでしょうか.
何かしらの理由でコレクタ電流が増えると回路が勝手にコレクタ電流を減らす方向に働きます.
もちろん,コレクタ電流が減れば,増える方向に働きます.
この作用を負帰還と読んでいます.
負帰還とは
何かが増えたら減らす,減ったら増やす.
という具合に反対(負)の作用をするように何かを入力側に戻すという意味です.
この場合’何か’が(コレクタ)電流です.
ちょっとわかりづらいですかね.
 
負帰還はいろいろな場面で使用されていますので,もう少し実例を.
例えば,最近の車にはクルーズコントロールといって速度を設定しておくと
勝手に同じ速度で走り続けてくれる機能があります.
これは.ある’設定値’(速度)に対して,センサなどで実際の速度を’検出’して,
遅ければアクセル踏んで加速,速ければアクセルを緩めて(もしくはブレーキを踏んで)減速
という動作を自動的にしてくれる機能です.
この,設定値に対して遅ければ加速,速ければ減速という動作も負帰還です.
雰囲気はつかめましたでしょうか.
図2の回路では
’設定値’がVBで電流の’検出’はREで行ない,アクセルとブレーキはVBEになります.
 
最後に電流帰還バイアスを使った小信号増幅回路をつけておきます.
交流信号にも負帰還をかけると増幅度が安定します.
 
ところで,
’負’帰還があれば当然の’正’帰還もあります.
何かが増えたら,さらに増やして,何かが減ったらさらに減らすという具合です.
何に使われているかというと,発振回路などです.
発振の説明によく使われるモデルがマイクですね.
カラオケなどで自分の出した声がマイクを通して,スピーカから聞こえます.
このスピーカからの声がさらにマイクに入ると,
’うぁーーん’耳が痛くなるような音がなります.
これが生帰還がかかって発振している状況です.
 
小さな声ー>マイクー>増幅ー>スピーカで大きな声ー>マイクー>増幅ー>スピーカでさらに大きな声...
と無限いループが続きます.これが発振です.
 
さて,いかがでしたでしょうか.
負帰還というのはあらゆる分野に使用される概念です.覚えておくときっと役に立ちます.
2学期の成績が悪かったから3学期は勉強しよう!
2学期の成績が良かったから3学期はちょっと怠けよう!
これも負帰還ですかね...
 
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